プロフィール

:: プロジェクトメンバー
代表 犬飼とも(造形作家)
運営 多田諭史

犬飼とも:プロフィール
ワタノハスマイル代表。1979年山形県寒河江市に生まれる。海辺に落ちているゴミを使ったオブジェの制作を始め、子ども達と一緒にオブジェを作るワークショップを開催。東日本大震災直後より、宮城県石巻市渡波地区の子ども達とガレキを使ったオブジェ制作を行う「ワタノハスマイル」プロジェクトを設立。現在、北海道を拠点に「アートスクール・トルネード」にて講師を務める。

お問い合わせ先:
inugaitomo@gmail.com

「ワタノハスマイルができるまで」

震災をきっかけに宮城県石巻市、渡波(ワタノハ)地区の子ども達と造形作家の犬飼ともさんが町のカケラでオブジェを作りはじめました。

あの日・・・

2011年3月11日、東北地方で大きな地震がありました。大きな津波は人々が大切にしていたモノをたくさん壊してしまいました。犬飼ともさん (以下、ともさん)。その日は、山形市内を車で運転していました。信号で止まっていると、いきなり地面が揺れだし、携帯電話から普段聞いたことがない緊急速報を知らせる音が鳴りだしました。揺れは今まで感じたことのないほど激しく、とっさにつけたラジオからも、ただならぬ雰囲気が伝わり何かとんでもないことが起こったのだと思いました。ともさんが東北沿岸部の様子を知ったのは、山形市内の停電が解消されて2日経った日のことでした。次々とテレビに映しだされていたのは、津波に破壊されたガレキだらけの町の姿。言葉を失いました。

ガレキの山をオブジェに!

ともさんは、海辺に漂着したゴミを使ってオブジェを作っている造形作家です。素材となるゴミに愛着をおぼえていました。テレビから流れる大量のガレキの映像を見て、何ともやるせない気持ちで心がいっぱいになりました。連日テレビから流れるのは暗いニュースばかり「何か明るいニュースを作らなければ日本は潰れてしまうのではないか」そう考えたともさんは自分に出来ることはないかと考えました。そして、被災地の子ども達とガレキでオブジェを作る計画を思いついたのです。ガレキのオブジェが日本中を明るくする「希望の光」となるはず!そう思ったのです。今までの作家活動はこのための準備期間だったのかもしれない、今こそ作品作りの経験を発揮する時がきた!と感じました。

いざ、ワタノハへ!

ともさんが、訪れた石巻市で最大規模の避難所となった渡波小学校では、赤ん坊からお年寄りまでたくさんの人達が肩を寄せ合って生活していました。電気や水道が止まっているのはもちろんのこと、暖を取る寝具や食事すらままならない状況。教室や体育館は人でいっぱい、校庭はガレキで埋め尽くされ、子ども達が自由に遊べる場所なんてどこにもありませんでした。被害の大きさを目のあたりにして、子ども達とガレキでオブジェを作りたいなど言い出すことが出来ませんでした。しかし、そんな学校の校庭で、子ども達はガレキの山から遊び道具を見つけて、どろんこになりながら楽しそうに遊んでいたのです。こんな状況のなかでガレキをおもちゃに変え、たくましく遊ぶ子ども達の姿をみて、「何のためにここまで来たんだ!自分が出来ることは子ども達とオブジェを作ることだ!」と消そうとした思いがよみがえってきました。

避難所にできた遊び場

ともさんは、炊き出しボランティアとして働きながら、被災した町の人々や子ども達との距離を、時間をかけてゆっくり縮めていきました。ともさんを見る周囲の目もいつしか「よそから来た人」から「いつもいる人」に変わっていきました。そして、子ども達が自由に遊べる場所を避難所に作りたいと災害本部に相談しました。朝晩は会議室として使われていた理科室が、日中はプレイルームとして使えるようになりました。そして、ともさんがガレキでオブジェを作る計画を子ども達に発表すると、すぐに「やりたい!」と声を上げてくれました。親達も「面白そうだね!」と好反応。目の前に横たわっていた不安は一気に消え去り、ついに計画は動き出したのです。

町のカケラ

ともさんは、校庭からガレキを拾い集めました。このガレキは渡波の町の大切な記憶が詰まった「町のカケラ」です。綺麗に洗って、プレイルーム前の廊下に並べました。オブジェ作りに必要な道具は、カケラ同士をくっつけるグルーガン(接着剤)とペンだけ。あと、大切なのは想像力。

ワタノハスマイルの誕生!

子ども達は、ボコボコに凹んだバケツや錆ついた電気スタンド、ねじ曲がった鍋の蓋、スプーンなど「町のカケラ」を遠慮なく自由にくっつけていきます。オブジェを作りあげるスピードと子どもの想像力はすさまじいものがありました。ともさんの、予想を越えるオブジェが続々と出来あがっています。子ども達は、自分が作ったオブジェに目や口を描きました。そして、注意深く見てみるとそのほとんどが笑っているのです。津波に壊されて、粉々になった町のカケラが、笑顔あふれるオブジェとして生まれ変わったのです!かつてない熱気と制作スピードで、2日間で約100体ものオブジェが誕生しました。オブジェは廊下に展示され、通りかかる大人達をクスッと笑わせてくれました。ユニークなオブジェとなってスマイルの輪を広げてくれたのです。そうして震災発生から約1カ月後、ワタノハスマイルが誕生しました。

ワタノハスマイル展

その後、オブジェは「ワタノハスマイル展」と名付け全国各地のギャラリーやイベントで展示されました。 2012年4月にはイタリアの博物館でも展示され、子ども達もイタリアに行ってきました。オブジェがイタリア人にほめられ、意気揚々とした子ども達。オブジェには、何事も笑顔に変えてしまう、明るくて楽しい子ども達の力が、たっぷり詰まっています。

※書籍ワタノハスマイルより引用